point 1 一本の線には目に見えない磁場のようなものがあることを絶えず意識する。
「一」
*磁場のようなものは、専門的には「字座(じざ)」と言います。
「桂」
木偏の下辺と、最終の横画を揃えると、線に具(そな)わっている目には見えないボリュームの関係で、旁(つくり)が下がって見えます。
「花」
同上。
「三田」
「田」を「三」の横幅に合わせてしまうと、当然「田」が異常に大きく見えます。
↑
二行目の《黒田官兵衛の・・・》部分は毛筆フォントですが、
《田》が大きく見えすぎています。
「くろだ!かんべえ」みたいに見えていますね。
フォントは正方形に合わせて作られますので、
そのままで並べてしまうと、
この図版のようになってしまうことが多々あります。
「一朗」
同上。
「司」
活字(「司」)のように書くと、左側がさみしく見えます。左右のボリュームが釣り合っていないからです。二画目以降をやや左に出すことによって左右の量感が呼応します。
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このような観点で、例えば、活字の「前」字を見れば、目には見えないボリュームの関係で(補助線参照↑)、「前」字の下の部分が、三画目の両端よりも張り出しているように見えてしまいます。活字は正方形におさめようとする文字ですので、仕方ないことですが、手書きでは、このような観点を絶えず意識して書きたいものです。
下の画像は、月と刂部分をやや小さくしてみたものです。目には見えないボリュームが、視覚的には、三画目の両端と同じくらいに見えますので、文字の美意識という観点で見れば、こちらの方↓が整って見えますね。ここでは、たまたま「前」字を取り上げただけです。応用できる文字は他にもたくさんあります。書くときは、このようなことを考えてから書かれますと、だんだんと、違和感のない整った文字が書けるようになってきます。