楷書を美しく書くための5つのポイント

【5つのポイント】 3.余白の広さの加減

point 3  文字の中にできる余白の広さが同じに見えるように書く。

 

“余白を広さを同じにする”ではありません。

“余白の広さが同じに見えるように書く”ということがポイント。

 

○「真」

5つのポイント「真」1 5つのポイント「真」2

 

まず、この文字は、中心をとりやすい文字ではあります。
二画目さえ中心に書けば、あとは余程のことがない限りずれてしまうことがありません。

難しいのは内部余白の広さの加減です。

この文字を書く前、私は頭の中で以下のようなことをまず考えます。

まず強調する画は?

八画目を強調。

八画目を強調するので、一画目は長くならないようにしなければないな。

概形は三角形あるいは台形だな。

ここまでは先ほどのポイント(1.強調する部分を見極める)と同じです。

 

ここからが大切です。

 

内部余白の広さの加減です。

横画がたくさん並ぶ場合、横画に挟まれた空間がたくさんできます。

文字で重要なことは、「等間隔」というよりも、「等間隔にみえるように」すること。(横画に挟まれた空間をすべて等間隔にすると、かえってバラバラに見えることが多々あります)

内部空間は、「風通しのよい・よくない」で考えます。

5つのポイント「真」1
(再掲載)「真」

まず「目」のB・C・D箇所は、

四方を線に囲まれていますので、もし横画同士の間隔が狭いと、息苦しく見えてしまいます。

よって、一番ゆったりとした空間をもたせます(目の部分の三・四画目終筆を右側の縦画につけすぎないことも、ゆったりと見せる要素です)

 

一方、Eは、風通しのよい部分。間隔が一番狭くても、風通しがよいので息苦しく感じない。

Aはどうか。

この部分は、半分ふさがって半分あいています。

よって、B・C・Dよりは狭く、Eよりは広く、と考えます。

こうすることで、内部余白が視覚的に「等間隔に見え」ます。

5つのポイント「真」1
(再掲載)「真」

 

ポイントから少し脱線しますが、

線の太細にも注意しましょう。やや高度ですが、一画目をやや太く、八画目をやや細く書きます。

長い画はやや細く書くと文字が重苦しくなりません。

 

私は「真」を書くとき、

以上のようなことを頭の中で瞬時に考えてから書き始めます。

ただ、途中、思い通りにならなくても、次の画、次の画でバランスを微調整し、前のミスを補うように書くことも大切です。それが文字を書くとき共通の心構えのひとつでもあります。

 

 

○「賞」

「真」と原理は同じです。

楷書の古典「九成宮醴泉銘」〔石碑に彫られたものです〕の「賞」には、
この△例のような感じのゆったり感がありますが(文字を書いた欧陽詢〔おうようじゅん〕は、石工が彫りやすいように、ということも考慮していたと思われます)、もちろん九成宮の「賞」字は間延びしていません。
この△例は明らかに違和感があります。

5つのポイント「賞」15つのポイント「賞」2

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

楷書古典「九成宮醴泉銘」のことを出したついでに、もう少し高度なことを書いておきます。

下は、九成宮醴泉銘の「閑」字です。“門”の右側部分の横幅が左側部分の横幅よりも、やや広くなっていますが、違和感がありません。同じサイズに見えます。

九成宮醴泉銘「閑」
九成宮醴泉銘「閑」

 

下の図は、正方形を左右二等分した図ですが、左側がやや広く見えませんか。九成宮の閑は、その目の錯覚を補うために、右側をやや横広く作って同じ幅に見えるようにしてあります。心憎いですね(^^)。

正方形を左右二等分した図

 

 

↓ これに関連してもうひとつ

田(余白)「田」字も、右側の余白を左側の余白よりやや広く作ると、しっくりとしますね。(例えばもし、3画目の縦画を真ん中に書いたとしても、4画目の横画を右側の縦画にくっつけないだけで、右の余白を広く見せることができますよ)

 

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