point 3 文字の中にできる余白の広さが同じに見えるように書く。
“余白を広さを同じにする”ではありません。
“余白の広さが同じに見えるように書く”ということがポイント。
○「真」
まず、この文字は、中心をとりやすい文字ではあります。
二画目さえ中心に書けば、あとは余程のことがない限りずれてしまうことがありません。
難しいのは内部余白の広さの加減です。
この文字を書く前、私は頭の中で以下のようなことをまず考えます。
まず強調する画は?
八画目を強調。
八画目を強調するので、一画目は長くならないようにしなければないな。
概形は三角形あるいは台形だな。
ここまでは先ほどのポイント(1.強調する部分を見極める)と同じです。
ここからが大切です。
内部余白の広さの加減です。
横画がたくさん並ぶ場合、横画に挟まれた空間がたくさんできます。
文字で重要なことは、「等間隔」というよりも、「等間隔にみえるように」すること。(横画に挟まれた空間をすべて等間隔にすると、かえってバラバラに見えることが多々あります)
内部空間は、「風通しのよい・よくない」で考えます。
まず「目」のB・C・D箇所は、
四方を線に囲まれていますので、もし横画同士の間隔が狭いと、息苦しく見えてしまいます。
よって、一番ゆったりとした空間をもたせます(目の部分の三・四画目終筆を右側の縦画につけすぎないことも、ゆったりと見せる要素です)。
一方、Eは、風通しのよい部分。間隔が一番狭くても、風通しがよいので息苦しく感じない。
Aはどうか。
この部分は、半分ふさがって半分あいています。
よって、B・C・Dよりは狭く、Eよりは広く、と考えます。
こうすることで、内部余白が視覚的に「等間隔に見え」ます。
ポイントから少し脱線しますが、
線の太細にも注意しましょう。やや高度ですが、一画目をやや太く、八画目をやや細く書きます。
長い画はやや細く書くと文字が重苦しくなりません。
私は「真」を書くとき、
以上のようなことを頭の中で瞬時に考えてから書き始めます。
ただ、途中、思い通りにならなくても、次の画、次の画でバランスを微調整し、前のミスを補うように書くことも大切です。それが文字を書くとき共通の心構えのひとつでもあります。
○「賞」
「真」と原理は同じです。
楷書の古典「九成宮醴泉銘」〔石碑に彫られたものです〕の「賞」には、
この△例のような感じのゆったり感がありますが(文字を書いた欧陽詢〔おうようじゅん〕は、石工が彫りやすいように、ということも考慮していたと思われます)、もちろん九成宮の「賞」字は間延びしていません。
この△例は明らかに違和感があります。
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楷書古典「九成宮醴泉銘」のことを出したついでに、もう少し高度なことを書いておきます。
下は、九成宮醴泉銘の「閑」字です。“門”の右側部分の横幅が左側部分の横幅よりも、やや広くなっていますが、違和感がありません。同じサイズに見えます。
下の図は、正方形を左右二等分した図ですが、左側がやや広く見えませんか。九成宮の閑は、その目の錯覚を補うために、右側をやや横広く作って同じ幅に見えるようにしてあります。心憎いですね(^^)。
↓ これに関連してもうひとつ
「田」字も、右側の余白を左側の余白よりやや広く作ると、しっくりとしますね。(例えばもし、3画目の縦画を真ん中に書いたとしても、4画目の横画を右側の縦画にくっつけないだけで、右の余白を広く見せることができますよ)